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WIDE10周年によせて

#02 Lawrence H. Landweber


ローレンス・ランドウエバー

Internet2
ウィスコンシン大学教授

日本におけるインターネットの発展に関し、村井純教授との過去14,5年の交流を 通しての私の思い出を語ることができ、光栄に思います。 村井純氏にお会いしたのは私が初めて日本を訪れた1984年のことでした。 当時、JUNET、Japan Unix Networks のたちあげが終わったころで、 村井氏及び石田教授はとても喜んでいらっしゃいました。 この取り組みが日本のネットワークの発展に多いに寄与するであろうことは明らかでした。その訪問の際、私はCSNETを共に始めたデビット・ファーバー教授と一緒で、日米の研究者の協力・交流をはかろうというのが目的でした。それ以来すぐに村井先生とのおつきあいが始まったのですが、先生は技術に詳しくUNIXやプロトコル等技術についての突っ込んだ話ができるというだけでなく、ネットワーク運営に際しての管理や組織構成といった点にも熟知されている方でした。まさに、我々が求めていた協力者にふさわしい方でした。また、ファーバー教授及び石田教授らとJUNETとCSNETとの接続をはかろうということになり、これは日本からのインターネット接続の草分けの一つとなったと思います。これは1984,5年のことでした。

このように、私たちは現在までほぼ15年間にわたり協力しあってきています。村井先生のことは日本での活動の姿のみならず世界の舞台での姿も見てきていますが、先生がこのように世界を相手にして活動できるというのは、多様な文化に適応できる方だからでしょう。欧米人を相手にするときでも日本人を相手にする時と同様に自然に接することのできる人です。

アメリカ人とのミーティングの際も自然な態度で接することのできる村井先生は、まさに日本を代表するスポークスマンとしてふさわしい方でしょう。その後しばらくしてWIDEプロジェクトが創設されましたが、1987年頃はどの国でもまだインターネットは始まったばかりでした。アメリカでもCSNETを介してインターネットに接続していたのは100拠点程度で、あとはARPANETを介して接続していたところがあった程度でした。しかし、WIDEプロジェクトは当時からとても積極的で、ネットワークに企業を巻き込んだ初めてのプロジェクトでした。おそらく、このようにインターネット関連のプロジェクトに企業を巻き込んだというのは世界でも初めてではなかったかと思われます。このようにWIDEプロジェクトは当初からとても積極的なプロジェクトでした。その後何度か我々も来日し、また村井先生の方も私が主催するワークショップに毎夏ご参加くださいました。インターネットを使うようになってきた各国のリーダー格の方々を集めての会議で、83年には20人程度の参加だったのが、90年には参加希望者が多すぎて、中には参加をお断りしなければならない人もでたほどでした。村井先生はこれに当初からご参加下さり、日本代表としてのみでなくある意味ではアジア全体をも代表していらっしゃいました。というのはアジア事情にたけた方だったたからです。

また、村井先生がインターネット・ソサイエティ(ISOC)の役員に選ばれたことは大変嬉しく思います。当時私はISOCの会長(プレジデント)をしており、村井先生は大変重要な役割を果たしていただきました。また、先ほど、村井先生は技術のみならず管理や組織運営にもたけた方だと申しましたが、先生はまた政治的手腕にも優れていらっしゃる方です。ISOCで論議することが大半が政治的なことがらなわけですが、村井先生はまたIETFという技術的な論議をする方にも積極的に参加なさっていらっしゃいました。通常、この2つの団体は別々のものととらえられるのですが、村井先生はこの両方を行き来できる方で、多様な文化に適応し、様々な活動に参加できる才能にあふれた方です。また、これは日本にとって大変大事な点だと思いますが、村井先生は研究においてもリーダーシップを発揮しているということです。政治的なことや組織運営にたけている人は往々にして研究分野とは一線を画していることが多いのですが、村井先生はインターネット技術の最先端の研究にいつも従事している方です。現在はギガビット・ネットワークの実証実験に取り組んでいらして、アメリカのインターネット2との接続をも検討中です。

WIDEプロジェクトは企業と大学の研究者とを共にインターネット指向のプロジェクトに早くから結び付たプロジェクトの一つです。WIDEプロジェクトの成功は村井純教授のリーダーシップに負うところが大きいですが、加えて、この10年間WIDEプロジェクトを支えてきた方々のご尽力の賜物ともいえるでしょう。それらの方々のご尽力により、日本はインターネットの研究のみならずインターネット技術の開発でも世界をリードすることができるようになったのでしょう。WIDEプロジェクトのこのパワーは今後の10年も続くことを期待しています。そしてインターネット2やインターネット3にもWIDEプロジェクトの方々といっしょに取り組みたいと思っています。


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